1 ペナルティ税は重い

ペナルティ税というのは税法用語ではないが、分かりやすいので使わせていただく。ここでペナルティ税とは、納税者側に、何らかの税務上のルール違反があったため、通常支払うべき税金(本税)に付帯して課される税金であり、正しく申告されなかった税額、または収められなかった税額を基礎に計算される。この付帯税は加算税と延滞税と利子税がある。それぞれ、どれ位、課されるか見ておこう。

4種類の加算税
1 過小申告加算税 10%(50万円を超える増差額に対し15%)
2 無申告加算税 15%(50万円を超える部分に対し20%)
3 源泉徴収に係る不納付加算税 10%
4 重加算税 35%~40%
延滞税、利子税、還付加算金
内容 本則 平291.1~
延滞税 納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後

納期限までの期間及び納期限の翌日から

2月を経過するまでの期間

14.6% 9.0%
7.3% 2.7%
利子税 所得税法、相続税法の規定による延納等、

一定の手続きを踏んだ納税者に課されるもの

7.3% 1.7.%
付加算金 国から納税者への還付金に付される利息 7.3% 1.7.%

見ていただければ分かるように、重加算税を課されなくとも、加算税と延滞税を合わせるだけで、消費者ローンの上限利息(100万円以上)15%を優に超えてくる。げに恐ろしきは、ペナルティ税である。だから、税金は正しく速やかに申告し納税しなければならない。

2 重加算税は刑事罰だから厳しい

重加算税はいわば刑事罰に近いから、税率も高く厳しい。とにかく税率が35%~40%というのは、常軌を逸した高率である。一体どんな悪いことをしたら、重加算税が課せられるのだろうか?

国税通則法第68条には

「納税者が、その国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し・・・・・」とある。そして、その申告局面では過少申告と無申告、不納付についての3パターンにつき、重加算税を定義している。

簡単に言えば、「在る物を無いとする(隠蔽)か、無いもの有るとする(仮装)か」を意図的に行い(まあ手品みたいなものかな)、これにもとづき申告書を作成、提出した場合がこれに当たる。そんな犯罪的な行為は通常、誰もしないように思われる。しかし、「李下(りか)に冠(かんむり)を正さず」というではないか?注意しなければならないのは、意図的に隠したのではないのに、そう疑われる可能性があるような事例は、世の中、意外に多いのである。

3 相続税の申告でよくあるケース

昔、相続開始直後に顧問契約を解除してきた資産家のクライアントがいた。その理由というのが、「死亡直前に預金を引き出すなど、被相続人の財産を隠す方法をまったく指導しなかった」からだという。あまりの乱暴な理由には、いささか驚いた。わたしは、普段から長期的なビジョンに立った対策をアドバイスしていたが、生前、先代(被相続人)はその対策には、一切、耳を貸さなかった。相続財産には、架空名義の多額預金や、高額の美術品などがあり、仮に、わたしが申告を行ったとしても、おそらく納税者との間で、トラブルが起こっていただろう。

実は、死亡直前の預金引き出しや、架空名義の預金などが、もっとも重加算税の対象になりやすい。とくに現金には名前がついていないので、手にしたとたん自分の財産だと錯覚してしまうらしい。死亡後の葬式費用には数百万円必要だし、余った現金は物騒なので相続人の口座に入金したり、金庫(貸金庫)に保管したりする。死亡直前に1千万円も引き出せば、その行先が説明できなければ現金が手元に残っていたはずである。これらについても重加算税の対象になる。

架空名義や他人名義の預金は、確実に重加算税の対象となるだろう。だいいち、税務署は10年くらいの資金の流れを正確に把握しているから、資金の源泉が被相続人のものであることは簡単に証明できるからである。

一番厄介なのは、他の相続人に内緒にしていた預金や、税理士に報告しない預金が後日発見された場合である。残念ながら、これらは、すべて重加算税の対象になる。後で、いくら悔やんでも取り返しがつかないのでご注意を。