1 必要経費の考え方の基本は法人税法と同じ
所得税法では、「その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該収入を得るために直接要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費用以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする」としている(所得税法37?)
接待交際費のところでお話ししたが、「費用収益対応の原則」「経営努力と成果の期間対応」という企業会計原則の基本は同じである。ただ、個人事業の場合は、家庭生活の経費(いわゆる家事関連費)が混入してしまうことが多いので、必要経費の認定はやや厳格に解される。すなわちその費用が ?事業活動と直接関連性を有し、?当該業務の遂行上必要であることが条件となり、それ以外の費用は家事関連費とされる。
2 ロータリークラブの会費
ロータリークラブやライオンズクラブの入会金や会費は必要経費とみなされるだろうか?
結論から言うと必要経費として認められないということになる。
国税不服審判所の裁決事例を見てみよう(平成26年3月6日裁決)。
この事例は、司法書士業を営む審査請求人がロータリークラブの入会金及び会費を事業所得の計算上、必要経費に算入して所得税の確定申告を行っていたが、原処分庁がこれを必要経費として認めず、所得税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分したのに対し、その取り消しを求めた事案である。
<請求人の主張の要約>
- 請求人の行う司法書士業務は、人とのつながりが特に重要であり、紹介により仕事を獲得することが多いものであるところ、請求人は営業活動の一環として、本件クラブに入会し、本件クラブの活動に継続的に参加することにより、顧客を獲得している。したがって、本件クラブの活動は、事業の遂行上必要な活動に該当する。
- 法人が支出するロータリークラブの会費等については交際費の経費として認められており、同じ会費の支出であるのに、人格の違い及び税法上の解釈で経費計上の取り扱いが異なるのは合理性を欠く。
<原処分の主張の要約>
- ある支出が必要経費とされるには、その支出が客観的にみて、事業の業務と直接の関係を持ち、かつ業務の遂行上通常必要な支出であることを要し、その判断は当該事業の業務内容など個別具体的な諸事情に即して社会通念に従って実質的に行われるべきである。
- 本件クラブの要綱には有益な事業の基礎として、奉仕の理想を鼓舞しており、これを育成することとしており、本件クラブは奉仕活動を行うことが目的であるから、この奉仕活動は、請求人が司法書士として行う事業には該当しない。
<審判所の判断要約>
原処分の主張を全面的に支持したうえで、請求人の主張?に対しては、法人は事業遂行又は所得獲得を目的として設立されるものであり、その活動はすべて事業遂行又は所得獲得のために行われる結果、その活動により生じた支出を損金として益金から控除することが認められている。しかし、個人は事業遂行又は所得の獲得活動の主体であると同時に私的な消費活動の主体でもあり、その支出の中には消費支出の性格を持つものがあるため、それらを必要経費から除いている(所得税法37条、45条)。
したがって、個人の支出に関する取り扱いは、家事関連費という概念がない法人の支出とはおのずと異なるとして認めなかった。
(法人税の取り扱いの注意点)
接待交際費の取り扱いは、大会社では原則、全額損金不算入だが飲食代のみ1/2を損金算入できる。中小会社では800万円までが損金算入で超えると、飲食代の1/2と800万円のいずれか大きい方の金額となる。