1 業務アウトソーシングの傾向

企業は、深刻な人材不足から、業務をアウトソーシング(外部委託)する傾向にある。アウトソーシングであれば、その支払いに対して所得税の源泉徴収義務はなく、社会保険や労働保険の加入義務もない。また、消費税の観点から見ても、外注費は仕入税額控除できるので、断然有利だ。

しかし、外注先が会社ではなく個人の場合は注意を要する。仮に、当事者間で請負契約書を結び、「業務の請負」と認識しているにもかかわらず、税務調査において、給与と認定されことが多々あるからである。つまり、請負ではなく、雇用とみなされるわけで、この場合には、源泉税や消費税の追徴課税を受けることになる。

したがって、個人業者へ業務委託する場合には、その内容を細かく具体的に吟味しておく必要がある。

2 消費税法通達の定義

消費税法では、その通達において、個人事業者と給与所得者の区分について、以下の記載がある。

事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しない。つまり、出来高払いの給与を対価とする役務の提供は、事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当する。あくまでも、支払いを受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのだが、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする(消費税基本通達1-1-1)。

  1. その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
  2. 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
  3. まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のために滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
  4. 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。

3 給与認定の事例

<建設工事関係の請負のケース>
  1. 概要

納税者甲社は電気工事の設計施工を目的とする株式会社でA社の専属的な下請け会社であった。甲社は6人の支払先と口頭で約束し、各支払先は、それぞれ甲社の代表者またはA社の現場の指揮者の監督の下で電気配線工事に従事していた。各支払先は、電気配線工事に従事するに当たり、甲社に対して、現場名、出勤日、残業時間及び夜間勤務日等を記載した書面又は同様の記載内容の請求書を作成し、甲社はこれに基づき、支払いを行い、この支払額を外注費として経理処理を行い、源泉徴収はせず、課税仕入に係る支払対価の額として、消費税の申告を行っていた。

  1. 判決の要旨
  • 各支払先は甲社に常用され、専属的に甲社の下で電気配線工事の作業に従事していた。
  • 各支払先は甲社以外の兼業はしておらず、孫下請けにも出していない。また、店舗、営業所、事務所はなく、営業用の資産を持たず、屋号もない。
  • 各支払先の賃金体系、特に時間外労働については、概ね、労働基準法などの定めに準じていた。
  • 各支払先は仕事の完成を約束して労務に従事していたわけではない。
  • 甲社と各支払い先との契約関係では、他人の代替による労務の提供を容認しているとは認められない。各支払先は甲社との雇用契約によって労務の提供をおこなっており、甲社との関係において空間的、時間的な拘束を受けつつ、継続的に労務の対価として報酬を受け取っていた。

以上のような理由から、外注費ではなく給与と認定された。

よく似た例はたくさんあるので以下例示にとどめる。

A:バー、クラブ、キャバレーなどのホステスへ支払われた報酬

B;教育機関に派遣する講師、家庭教師に対する報酬

C;販売員、マネキンに支払った報酬

D;運送業に従事する運転手に対する報酬

4 実務上の注意点

以上から、会社と個人間で請負契約を結んで、請負人が会社に請求を起こし、それに基づいて、会社が支払いを行っていたとしても、それだけでは外注費にならないということになる。

間違った解釈で、外注費として経理処理している法人はかなりあると思われるので、十分、注意する必要があるだろう。