1 法人税法上の接待交際費の取り扱い
とりあえず、法人税上の考え方を見てみよう。
「交際費とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう」(租税特別措置法61の4?、68の66?)
接待、供応は、ほぼ同じ意味で、「酒や料理を振る舞い、相手を丁重にもてなすこと」今流行りの「おもてなし」である。機密費、慰安、贈答になるとやや意味が広がり過ぎ、道徳的な問題まで絡んでくるので厄介である。
いずれにしても、交際費は、かなり広い範囲で定義されているが、法人税法の基本的な考え方は、元々、その損金性を認めていない。そして、交際費から除かれる費用項目を限定列挙している。(租税特別措置法61の4?、68の66?、措令37の5、39の94)
- 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
- 飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。)であって、その支出する金額を基礎として計算した1人当たりの支出額が5,000円以下であるもの
- カレンダー、手帳、扇子、うちわ、手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
- 会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
- 新聞、雑誌等の出版物又は放送番組を編成するために行われる座談会その他記事の収集のために、又は放送のための取材のために通常要する費用
2 大法人と中小法人の取り扱いの違い
大法人(資本金又は出資金が1億円以上の会社をいう)では、平成26年4月の改正以前では交際費については全額損金不算入であった。が、改正後は、飲食代については、1/2を損金不算入とし、1/2を損金として認めることになった。国税局の立場としては、元々、全額損金不算入なのであるが、アベノミクスの経済効果なども考えて、1/2を損金として認めたのであろう。
節約は美徳ではあるが、経済学では「節約の誤謬」という原理があって、仮に、世の中の人全員が節約すると、経済のパイは縮小し、貧しくなるといわれている。お金がすべて貯蓄に回ったのでは、金の周りが悪くなり、経済が沈静化するからである。
中小法人ではどうかというと、平成26年4月改正前では、交際費のうち800万円までが損金として認められ、それを超える損金不算入であった。それが、交際費の800万円と接待飲食費の総額の1/2とを比較して、どちらか大きい金額までを、損金として認められることになった。
接待交際費のうち大部分は飲食に係る費用であるが、飲食代といっても、屋台の串カツから銀座のクラブまであり、その消費金額には著しく差異がある。通常、金額が高ければ高いほど「おもてなし」の質が上がると考えられる。しかしながら、人間の欲望にはキリがない。やはりそこには一定の制限が必要だろう。現在の法人税法上の取り扱いは、その辺を、程よく考慮していると考えられる。