建設業の実例から
ある報酬が、消費税法において、仕入税額控除の対象となるかどうかは、その報酬が事業所得となるか給与所得になるかによって決まる。
大工、左官、とび職などが支払いを受ける報酬が、所得区分すなわち事業所得となるか給与所得となるかは、その報酬が請負契約に基づく対価であるのか、または、雇用契約に基づく対価であるのかにより判定することになる。しかしながら、業務の遂行または役務の提供には種々の形態が存在し、その区分がかならずしも明らかでない場合が多い。そこで、下記の事項を総合的に勘案して判定することになる(消費税基本通達1-1-1)。
作業人の代替性はあるか?
本人が急病などで作業に従事できない場合、本人が自らの判断でほかの作業員を手配しているのかどうか?
手配しておれば、「給与」ではない根拠の一つとなる
時間的拘束の有無?
報酬の支払い者から作業時間を指定されていたり、報酬が時間を単位として計算されることや、時間的な拘束を受けるかどうか?
時間的拘束を受ければ給与所得の要素が強いことになる。
作業の内容や方法について報酬の支払い者から指揮監督を受けるかどうか
指揮監督を受けるのであれば、給与所得の要素が強いことになる。
危険負担を負うか否か?
引渡しを完了していない完成品が不可抗力で滅失した場合、すでに遂行した業務に対して報酬が請求できるか?
危険負担がないのであれば、給与所得の要素が強い。
材料等の供与があるか?
材料または用具を報酬の支払い者から供与されているかどうか?
供与されておれば給与所得の要素が強い。
請負契約の締結
請負工事の場合、下請け業者との間で請負金額を取決めた上で、請負契約書を作成して、工事に当たるべきだが、零細な下請け業者では請負金額を決定できないことも多い。雇用か請負かの判断は支払い方法ではなく、工事請負の内容による。
たとえば、労災保険の加入について、外注先というのであれば、自らが労災保険に加入し労災保険を負担しなければならない。
自己で申告すること
外注先がどのような申告をするかと、下請け業者に対して支払った対価が、課税仕入れに当たるかどうかの判断には直接関係がないが、少なくとも、課税仕入れというならば、事業所得者として自己申告すべきであろう。元請け業者は下請け業者に自己申告するように指導または促すべきである。