1 費用・収益対応の原則

企業会計における重要な原則に「費用・収益対応の原則」というのがある。ここに言う費用とは、何らかの経営努力を意味しており、その結果として収益が生まれる。一会計年度(期間)における、努力と成果の期間対応こそが、この原則の要諦である。

ところで、努力は基本的に苦痛を伴う。筋肉トレーニングで、盛り盛りの筋肉をつけたければ、うんうんと唸りながら、重いバーベルを、挙げ続けなければならない。

もちろん、世の中、努力したからと言って、すべて報われるわけではない。収益獲得に貢献しない努力は、費用ではなく損失(徒労)となる。

税務会計でも、何が費用(=損金)になるかを考える場合、ある支出が苦痛を伴うかどうかを考えてみると面白い。

今回は接待交際費がテーマなので、これについて税法の考え方を検討てみたい。

2 税法上の接待交際費の考え方

接待交際費とは一口で言えば、「おもてなし」である。得意先や仕入れ先から取引上有利な条件を引き出すため、あるいは、有利な情報を得るためなどの目的で使われる支出で、典型的なのが顧客を伴ってのゴルフ代や飲食代などがこれに当たる。

たとえば、ゴルフ接待にしても飲食にしても、接待側(もてなす側)が、一方的に苦痛を伴うものではなく、むしろ、どちらも十分楽しんでいるはずである。まあ、私のように、ゴルフが下手な人にとっては苦痛でしかないのだが(笑)。

いずれにしても、「おもてなし」であるから、お互いに楽しくなければ成立しない。だから、「苦痛」あるいは「快楽」のどちらかと問えば、快楽が優先している。つまり、単純な経営努力ではないので、経費性(損金性)は低いといえる。

しかし、だからといって、企業や事業主にとって、不必要なものかといえばそうではなく、必要な場合も多い。要するにそれは程度問題であり、税務署サイドからみてもどこまでを損金と認めるかは悩ましい問題である。したがって、税法上の取扱いの沿革をみても、随分変遷して来ている。

次回は具体的な税法上の取り扱いについて、お話ししたい。