貸倒れ損失 ②債権放棄したからといって損金として認められる訳ではない

1 法人が債権放棄したとき損金算入になるための条件

債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額は貸倒損失として、損金算入します。(法人税法基本通達9-6-1)

<条文解釈のポイント>
  1. 債務超過相当期間継続でいう相当期間とは?

形式的な期間は定まっていないから厄介である。一般的には、3年から5年とされるが、この間、放置していてはだめで、回収の努力を怠ってはならないとされる。

  1. 債権放棄の事実の証拠は?

税務調査を受けた時の証拠力を考えると、最低、内容証明便等を利用するのが賢明であろう。

  1. 債務超過の場合の財務判断基準は?

債務超過の判定は、決算書などに示されている価格ではなく、支払い能力の観点から、時価ベースでの清算価値評価による。

2 子会社に対する債権放棄は簡単には認められない

法人がその子会社等の解散、経営権の譲渡等に伴い、当該子会社等のために債務の引き受けその他の損失負担又は債権放棄等(以下、「損失負担等」という)をした場合において、その損失負担等をしなければ今後より大きな損失を蒙ることが社会通念上明らかであると認められるためやむをえずその損失負担等をするに至った等、そのことについて、相当の理由があると認められるときは、その損失負担等により供与する経済的利益の額は、寄付金の額に該当しないものとする。(法人税法基本通達9-4-1)

例1 甲社は土木・建築請負業を営む法人で、ゴルフ場の建設経営を目的とするA社との間で、昭和52年9月にゴルフ場の請負契約(請負代金16億5千万円)を締結した。その後、🏧社は債務超過の状態であるとして、昭和59年3月27日に任意で解散した。

そこで、甲社は乙A社に対する工事代金やつか融資分の約20億円を債権放棄し、昭和59年3月期の事業年度の法人税の所得計算において、A社に対する債権放棄した金額を法人税法基本通達9-6-1,9-6-2,9-4-1を根拠として貸倒損失として損金算入して申告した。

しかし、課税庁は甲社のA社に対する債権放棄は、損金算入することはできないとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。

甲は、この処分を不服として、取消しを求める訴訟を起こした。

<納税者の主張>

債権放棄は、経営不振の子会社の倒産の危機を回避するためやむを得ず行ったもので、基本通達9-4-1はそのために定められている。

<課税庁の主張>

A社は、解散の後、B社に、帳簿価額をはるかに下回る金額でゴルフ場を譲渡した。その後、B社のゴルフ場の売上は年々増加している。甲は、A社及びB社の代表取締役を兼ね、かつ、資本的支配下にあることを利用して、税負担を回避するために、一連の取引を計画的に行ったもので、基本通達9-4-1の「相当な理由」には当たらない。

甲は債権放棄しなくても、債権の履行を猶予し、利息の免除をすれば、債権放棄と同じ効果が得られるのであり、債権放棄まで行う必要はない。したがってこの債権放棄は甲のA社に対する経済的利益の供与にすぎず、寄付金の支出とすべきである。

<裁判所の判断>

  1. ゴルフ場の経営は、開業後も当分の間は債務超過の状態が続くのが通常であり、3年から5年状況を観なければ、債務超過の状況が相当期間継続し、当該債務の弁済が不可能かどうかは明らかにならない(基本通達9-6-1,9-6-2)
  2. 基本通達9-4-1は、子会社の整理等の場合において、親会社が自ら生き残るために必要不可欠なものとして負担した損失については、それが今後より大きな損失の生じることを回避するためにやむを得ず行われたものであり、それが社会通念上妥当なものとして是委任されるような事情にあるときは、寄付金には該当しないとするものである。

以上から言えることは、資本的支配関係にある親子間での債権放棄は、よほどの合理的な理由がない限り、損金としては認められないということである。経済的利益の供与ということになれば、寄付金認定ということになるから、取り返しはつかない。

蛇足ながら、この事例の債権放棄の通知には、税務当局から寄付金認定された場合には、撤回する旨の通知が記載されていたが、これこそ、基本通達9-4-1の趣旨を悪用している証拠であるし、また、そんな「子供だましみたいな後だしジャンケン」が、税務当局に通用するわけないではないか(笑)。

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