法制審議会は、1月16日、民法(相続関係)等の改正試案を取りまとめ、通常国会に提出される。
主なポイントは以下の通りである。
1 配偶者の居住権を保護するための方策
配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始時に居住している場合において、配偶者居住権が遺贈の目的とされたときなどは、その居住していた建物の全部を無償で使用収益する権利(配偶者居住権)を取得する。
2 遺産分割に関する見直し
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配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)
婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又は敷地を遺贈又は贈与したときは、民法903条の第3項の持戻し免除の意思表示があったものと推定し、遺産分割において原則、当該居住用不動産の価額を特別受益として扱わずに計算できるものとする。
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家庭裁判所の判断を得ないで、預貯金の払戻しを認める方策、
共同相続された預貯金債権の権利行使について、各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち、相続開始時時の債権額の3分の1に共同相続人の法定相続分を乗じた額については、単独でその権利を行使できる。その権利行使した預貯金は、共同相続人が遺産の一部分割により取得したものとみなす。
3 遺留分制度に関する見直し
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遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し
遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを要求することができる。
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遺留分算定方法の見直し
相続人に対する贈与は、相続開始前の10年間にされたものに限り、その価額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入する。
4 相続人以外の被相続人の親族の介護費用の請求
たとえば、相続人の妻が、被相続人の介護を行っていた場合、一定の要件を満たせば、相続人に金銭請求ができるようにする。
以上が、改正内容の要点であるが、配偶者の保護に関しては、配偶者とその子供の関係しか見ていないので、不十分である。
たとえば、被相続人(母親)を長期にわたって介護してきた相続人(長男)の妻が、夫に先立たれた場合、もし、子供がいなければ、相続権は切断されてしまうので何も財産は承継できない。被相続人(母)の所有する自宅で、同居して、介護していたような場合、長男の妻は何も相続できずに放りだされることなるのだ。しかし、これは、あまりに酷過ぎないか?
簡単に計算しても、介護費用は日当1万5千円としても、1年で547万円、5年では2千7百万円にもなる。精神的な苦痛や負担も考慮するともっと金額は膨らむかもしれない。
ところが、一般的に言って、長男以外の相続人はそのことに対して、無関心で冷酷である。また、民法上の相続人の寄与分の考え方も曖昧で弱いので、その妻ともなるともっと評価が低い。改正試案の4はこの点につき、かなり改善の兆しが見える。
しかしながら、同居していた家の居住権は妻には与えられない。このような場合でも、なんらかの居住権を保証する必要があると考えるが、いかがなものであろうか?