現預金や金融財産がある場合でも使える場合がある。

金銭納付が困難であるかどうかの判定は相続人ごとに行われますが、ここが味噌です。

たとえば、仮に被相続人が父で、母と長男の二人が相続人の場合、相続財産が現預金2億円、不動産が2億円の場合、子供が不動産を相続することにすれば、子供は金銭納付が困難となるので、物納が認められる可能性が高くなります。

つまり、遺産分割を工夫することで、相続人が金銭納付することができなくなれば、自然と物納となり、税務署側はそれを拒否することはできません。

 

上場株式を保有している場合

相続財産の中に、上場株式が含まれる場合には、市場価格が、相続時から相続税申告時期までに著しく下落しているときがある。過去には東京電力が8割くらい下がったことがある。

このような場合、相続評価は下落前の時価となるから、下落した上場株式で物納するのが有利である。

そのため、遺産分割での戦略は、相続人の一人に、不動産と有価証券を継がせるようにする。

物納の優先順位は両方とも一位であるから、税務署は物納を拒否できない。

 

上場株式物納の具体例

1の例と同じで、被相続人が父で、母と長男二人が相続人とします。

相続財産は、現預金2億円、不動産1.5億円、上場株式が0.5億円とします。

母が現預金2億円のすべてを相続し、長男が不動産と有価証券を相続します。

長男にかかる相続税は5,460万円となりますから、この納付を上場株式の物納で行います。

上場株式の相続税評価が5,000万円ですから、これに充て、足らずは現金で支払います。

その支払い分だけ長男が現預金を相続してもいい、でしょう。

もし上場株式の時価が死亡時から相続税申告時までに1/2に下落していたとしたら、長男は、物納することによって、上場株式を売却して調達するより、2,500万円得したことになります(ただし、株式譲渡による譲渡損益は考慮外とします)。

もっとも、わたしが関わった案件では上場株式がソフトバンクでその頃株価は800円でしたが、その後の株価は10,000円となりました。いやはや、こればかりは何とも言えません(笑。