死亡直前の現金流出
被相続人の死因にもよるのだが、通常、被相続人は死亡直前には病院のベッドに臥しており、自ら銀行に行くことができないことが多い。そのため、銀行から現金を出す場合は、子供さんが代理して行うことが多い。その場合、その出金が被相続人の意思によるかどうかは別として、お葬式の準備や病院の入院費の精算に備えて、200~300万円くらいは用意しておくことになる。最終的に銀行からの出金額と支出した金額に辻褄があっていれば問題はなく、相続税申告書では葬式費用や病院費用の未払い金として控除できる。残額については、相続財産として、預け金あるいは現金として相続税申告書に計上することになる。
行方不明の現金
被相続人が死亡する直前に、多額の預金が引き出され、他に消費された形跡がなく、相続人が引き出された事実を認識しているもかかわらず、その使途につき被相続人に確認した事実が認められず、かつ引き出された状況につき、合理的な説明がなく、不自然な説明や虚偽の説明が相続人からなされているような場合は、相続時点において当該現金は実在していたものとみなされる可能性が高い。
また、これらの現金が相続人やそれ以外の名義人に入金されている事実が認められれば、みなし贈与と認定される可能性がある(相続税法第9条)。
やっかいな問題
相続時直前に引き出した現金については比較的把握しやすいが、過去数年以上前に引き出された現金については内容が判明できない場合も多く、やっかいな問題となる。
たとえば、被相続人がギャンブル好きで浪費していることもあるし、銀座や北新地などのクラブなどの夜遊びで浪費していることもある。また特定の女性にお金をばらまいていることもあるだろう。
また、財産管理を任された相続人の一人が生前に勝手に現金を引き出して使っている場合もある。これらの場合には現金が見つからない限り相続財産とすることは難しい。費消しているなら相続財産にはならないが、勝手に引き出して使っていれば、当然、贈与認定の問題も発生する。また、相続人間での相続争いの火種にもなる。