大相続時代がやってくる。そんな言葉を耳にされた方も多いかもしれませんが、これからの日本の現状を考えると大袈裟な表現でもないように感じます。高齢化社会が進むなか団塊の世代が世代交代の時期に突入し高齢化社会を更に加速させるからです。2030年には日本人の3人に1人が75歳というデータがあるから驚きです。
人間には寿命があり、生前に築き上げた財産はその相続人へ引き継がれるわけです。そしてこの築き上げた財産がある一定ラインを超えると相続税が課税される。できることならせっかくの財産を相続人にそのまま引き継がせてやりたいと思う方が大多数ではないでしょうか。したがって適正な節税を可能であれば積極的にしたいという発想はごく自然です。そこで相続税対策でもよく使われる生前贈与について一度おさらいも含めてお話ししようと思います。
生前贈与の中でも現金贈与が一番有名かと思うので今回はそれに焦点を当てます。現金贈与でよく聞くのが贈与税の基礎控除範囲内の年間110万円を子・孫にやってる、年間110万円だと税務署に贈与を証明できないから年間111万円贈与して1,000円の贈与税を納めている、毎年同じ金額をあげていると定期贈与になるから毎年金額と時期をずらした方がいいなどなど・・・・と色々な話が飛び交っているわけですがそもそも贈与とは何なんでしょうか。
贈与は無償でものをあげることだよ。事象としてこの表現で間違いではないですがもう少し掘り下げて考えてみると、贈与を成立させるには下記の要件が必要なようです。
【贈与】
民法549条の内容を簡便的に表すと・・・・
- あげる人があげるという意思表示をすること
- もらった人がもらったよという認識があること
- もらった人が自分で管理していること
この3要件が満たされて贈与が成立すると思われます。
そもそも上記要件を満たしていないのに税務署に贈与税の申告をしているから贈与成立しているといったことは全く通用しません。名義預金が代表例ですね。
?つまり贈与を成立させるには後で立証できる形跡が必要なわけです。贈与契約書を作成しておけば全てOKという話でもありません。一見簡単そうな現金贈与でもあとで文句を言われないようにするためには意外と知恵と経験が必要なのです。
また既に贈与が行われている場合でも、贈与成立の判定について現金贈与と同様に知恵と経験が必要となりますのでご注意下さい。
?最後に、これは私の相続専門の事務所での勤務経験から申し上げますが、相続税対策も大切ですが、相続対策もこれからはもっと重要になってきます。この違いについてはまたの機会に詳しくお話できればと思いますが、私の考える相続対策とは相続人に財産を承継させる手間や面倒ごとをかけない、押しつけない、苦労をできるだけかけない対策をいうと思います。
もちろん節税をして相続人の納税を抑えることも含まれますが、具体的には、遺言を書いておく、任意後見、家族信託を検討する、将来負の財産になりうる不動産の有効活用・処分・寄付等の検討等、いわいる終活といったものです。相続税対策ももちろん大切ですが、この記事を読まれて相続対策の必要性についても心の片隅に置いておいてもらえると幸いです。