小規模宅地の特例 家なき子1 家なき子特例とは(租税特別措置法69条の4二 ロ)

いわゆる家なき子特例とは、同居親族が転勤などによって、相続開始時に別居中になっている場合、同居親族の特例が使えない人のための救済策として講じられた規定です。

2 5つの条件

  1. 被相続人に配偶者がいないこと
  2. 被相続人に相続開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族で相続人(相続放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人)がいないこと
  3. 相続開始前3年以内に日本国内にある自己または自己の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと
  4. その宅地等を相続税の申告期限まで有していること
  5. 相続開始の時に日本国内に住所を有していること、または日本国籍を有していること

つまり、被相続人は夫か妻に先立たれて、一人住まいになっており、相続人(子供)とは別居中で、相続人(子供)は社宅などの借家住まいになっていること、そして、配偶者も含めて自己所有の家屋に相続開始3年以内住んでいないことが条件になるため、自分の住む家を持たないという意味で「家なき子」と呼ばれます。

3 周辺の論点と注意点

イ 被相続人の入院

被相続人(配偶者はいない)が病気療養で入院した後、病院で死亡した場合、空き家となっていた建物に供された宅地等について、居住用宅地等にあたるかどうかですが、確かに被相続人の生活の拠点は病院に移転したように見えますが、あくまで病院は治療のための施設であり、病気が治れば、退院して元の自宅に帰るのが通常ですから、居住用宅地等に該当します。

ロ 単身赴任

被相続人と同居していた長男が、単身赴任などで一時的に別居状態になっていても、長男の家族(妻や子供)が残っていて、そこで従来通り生活していれば生活の拠点は元のままですから、同居状態は変わらないとみなされ、小規模宅地等の特例の適用はできます。

ハ 看病で一緒に住む場合

子供が、自分の家族を離れて、親の看病のために何か月間か一緒に生活した後、親が亡くなったとしても、それは一時的に一緒に生活しただけで、同居とは見なされず、特例の適用はありません。

二 所有と居住は違う

自己または配偶者の所有する家屋に居住しないことで、所有する家屋に住まず、これを賃貸に出していた場合などはこれに当たらないので、特例の適用はできます。

ホ 配偶者の死別または配偶者との離婚

配偶者の所有する家屋に相続開始前3年以内に住んでいても、配偶者が相続開始までに、死別しているときは、配偶者の所有する家屋を相続していなければ、特例の適用はできます。
配偶者との離婚の場合も同様に考えられます。(措置法通達69条の4-22)

へ 親の敷地に子供が家を建設した場合

親の敷地に子供が家屋を建設し一緒に住んでいたが、転勤などで相続直前に別居していた場合でも、特例の適用があります。③の条件の括弧書きに「相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます」とあります。

ト 孫でも適用可能

小規模宅地等の特例の対象は、相続人に限らず親族ならだれでも適用可能です。「家なき子」特例も親族であればだれでも適用可能です。たとえば、一人暮らしのお祖母さんが、持ち家のない孫に、遺贈により取得させても適用できます。
ただし、相続税の2割加算は覚悟しなければなりませんが、小規模宅地等80%の評価減のメリットを享受できるので、節税効果は大きいです。

チ 申告期限まで住む必要はない

「家なき子」特例は、被相続人の居住用の宅地等を取得した親族が、相続税の申告期限に居住している必要はありません。相続直後に賃貸に出すことも可能です。