1.監査法人意見不表明の意味

東芝は2017年5月15日付のIR情報で、PWCあらた監査法人の意見表明を得られないまま2016年度の業績見通しを発表した。それによると、当期純損益は-9500億円の赤字で、純資産は-2600億円の債務超過となった。子会社のウエスチングハウス社(WH)米国破産法11章を適用されたため、減損処理を行った模様である。

東芝は、2015年5月11日に不正会計の調査のため「決算発表延期、配当見送り」というショッキングな発表以来、懲りずに、同じ状況を繰り返している。この間、東芝は監査法人を新日本監査法人からPWCあらた監査法人に変更した。しかし、監査法人を変更しても問題は解決しない。監査法人は警察官でも検察官でも裁判官でもない。不正や犯罪を暴くのが本業ではない。限られた時間と人員のもとで、かつ、会社の協力のもとに得られた情報と証拠から、とてつもない大きな会社の決算書を監査し、判断しなければならない。いい加減な監査で粉飾を見逃すと、多額な罰金を払わされる。その上、業務停止をくらえば、他のすべてのクライアントとの契約は一旦解除しなければならず、ほとんどのクライアントは帰ってこないから、法人は解散に追い込まれる。監査法人も生き残るために必死なのである。

監査意見のパターンは3種類ある。①適正意見、②限定付き適正意見、③不適正意見である。意見不表明というのは意見ではない。つまり、会社にある重要な問題点が生じており、それに対して、意見を述べるに十分な証拠が整っていないか、あるいは証拠はあっても、所有している子会社や暖簾(のれん)などの資産評価やその償却において、著しく見解が違う場合などである。今回、東芝はウエスチングハウス社(WH)の減損処理を計上しているにも関わらず、意見不表明ということは、東芝側にまだ隠された簿外債務や偶発債務などがあり、その評価をめぐって意見の対立があるのかもしれない。おそらく、それはウエスチングハウス社(WH)絡みであろう。

2.上場廃止の条件は揃っている

東証が東芝を特設注意銘柄(いわゆる監視銘柄)に置いたのは、2015年9月であり、一年後2016年9月に指定継続となっている。つまり、監視銘柄になってから1年経過しても中味は改善されなかったということである。そして、2017年5月15日においても、東芝は、新しい監査法人との間での意見調整が得られないまま、決算見通しを独自で発表した。そしてその中身はすでに債務超過に陥っている。ここまでくると、東証2部の鞍替えもあるのだろうが、それよりむしろ上場廃止の条件は十分そろっていると言える。

普通の上場会社であればとっくに上場廃止だろう。ライブドアーは粉飾一回で上場廃止となった。しかし、東芝はまだそうならない。これくらい巨大な会社になると、上場廃止になると、その社会的影響があまりに大きい。どのような形で収束させるのか、そこには政治問題や大手ファンド会社や世界中のライバル会社の思惑などが錯綜して、なかなか結論を出せないようである。

文責  増井 高一