タワーマンションを利用した贈与戦略
1 固定資産税見直しの動き

2017年度の税制改正大綱で、地上20階以上の高層マンションの固定資産税について、階数が一階上がるごとに固定資産税が0.26%ずつ上がるように改正された。ただし、マンション一棟の固定資産税総額は変わらないので、丁度、中階層から上が増税、中階層から下が減税となる。

この改正は相続税における財産評価には、現在、直接影響はないが、2018年度以降、高層マンションの財産評価についても、何らかの修正が加えられるものと予測される。

しかし仮に修正があっても、高層マンションの取得時価と相続税評価額との間に、著しくギャップがあるという現況を、大きく変えるような改正にはならないと思う。上記改正でも50階差で13%の固定資産税の違いに過ぎないから、仮に評価額に同じような改正が加えられても現況を大きく変えるものではない。やはり、相続税対策封じを徹底するなら、取得後3年間は取得原価のままで評価するといった旧措置法69条の4(平成8年廃止)の規定を復活させるしかないだろう。ただし、この評価方法は個人では廃止されているが、法人の株式評価では今も生きている(財産評価基本通達185)ので注意する必要があるだろう。

2 贈与対策として

1の現況を踏まえて今回はタワーマンションを利用した贈与対策を考えてみたい。

  1. タワーマンションンを賃貸している場合には、この収益物件をそのまま親から子供へ贈与するプランが考えられる。仮に92㎡の高層マンションを6000万円で購入し、賃料が月額25万円見込まれる収益物件で考えてみよう。事例は大阪市のタワーマンションの実例から。相続税法上の評価額は以下のようになる。
取得原価 固定資産税評価額

(相続税評価額)

表面利回り
建物 5000万円 1250万円

(固定資産税評価)

1250万円×(1-0.3)=875万円

(相続税評価額)

25万円×12か月=300万円
土地 1000万円 250万円

(路線価)

(手取り収入)

300万円×80%=240万円

 

250万円×(1-0.6×0.3)=205万円

(相続税評価額)

合計 6000万円 1080万円

この物件を一度に贈与すると贈与税は198万円(1080-110)×40%-190となる。
ただし、3年にわたって贈与すれば年額27.5万円(360-110)×15%-10)の3年で82.5万円となり、82.5万円/6000万円=1.375%のコストで財産が移行したことになる。
この贈与によって、毎年240万円の家賃収入が子供に入る。しかも、贈与の取得原価は贈与者の取得原価を引き継ぐから償却年数47年で計算すると年額95万円償却できるので、キャッシュインはその分増える。

つまり、198万円贈与税を支払っただけで、5000万円に対する償却が取れるわけである。このメリットはかなり大きい。所得税住民税の実行税率が25%とすると年額約203万円{240-(240-95)×0.25}のキャッシュインとなる。

10年後に仮に相続が起こったと仮定するとどのようなキャッシュイン効果があるかを計算してみる。

現預金2億円の相続財産を保有している親(配偶者なしと仮定)で、子ども1人と仮定してみる。マンション時価は10年で10%下落するものと仮定し、相続後まもなくマンションは売却すると仮定する。

何もしないケース 贈与した場合
相続税財産;現預金2億円 相続財産;1.4億円(2-0.6)
相続税;(2億円-3600万円)×0.4

-1700万円=4860万円

相続税;(1.4億円-3600万円)×0.4

-1700万円=2460万円

賃料収入203万円×10年=2030万円
贈与税;198万円
マンション売却額;5400万円/

手数料162万円

譲渡所得税80万円(5400-5000)×20%
マンション売却手取り;5158万円
総手取り額;2億円-4860万円=1億5140万円 総手取り額;1.4億円-2460万円-198万円

+2030万円+5158万円=1億8530万円

手取り差額;1億8530万円-1億5140万円=3390万円有利となる

 

  1. 最後に、このプランに相続時精算課税を使うとどうなるか見てみよう。この場合は収益物件を相続まで親が保有する場合と贈与する場合との比較になる。建物については、簿価も固定資産税評価額も10年で20%減価するものとし、相続直後に取得原価の90%で売却すると仮定する。
贈与しないケース 相続時精算課税で贈与するケース
相続財産;現預金1億4000万円 相続財産;現預金1億4000万円
家賃収入;2030万円 家賃収入;2030万円
不動産/建物;700万円(875万円×0.8) 不動産;1500万円
土地;205万円 相続税;(1億4千万円+1080万円-3600万円)

×0.4-1700万円=2892万円

合計:1億6935万円 不動産売却収入;5158万円
相続税;(1億6935万円-3600万円)×0.4

-1700万円=3634万円

 贈与税;0
不動産売却収入;5158万円
総手取り額;1億4000万円+家賃収入

2030万円-3634万円+5158万円

=1億7554万円

総手取り額;1億4000万円+2030万円

-2892万円+5158万円=1億8296万円

手取り差額 1億8296万円-1億7554万円=742万円 有利

さらに、単純な贈与と相続時精算課税を比較すると、単純な贈与の方が相続時精算課税を使うより、234万円(1億8530万円-1億8296万円=234万円)手取りが多いことに気づく。相続時精算課税が有利になるかどうかは10年後、20年後を見据えた長期的なシミュレーションを建て、慎重に判断する必要があるだろう。

(追記)
収益物件を贈与する場合に、預かり保証金を保有している場合には、必ず、贈与する不動産とは別扱いで、預かり金を精算する必要がある。つまり、預かり金は現金で支払うか子供の預金口座に必ず振り込まなければならない。これを怠ると、負担付贈与ということになり、時価で評価されるので元も子もなくなるので、要注意である。

3 相続対策、贈与対策のリスク

どのような対策でも税務上のリスクは常に存在する。タワーマンションのように取得時価と相続税評価額の乖離が著しく大きければ、それだけで否認のリスクはある。基本通達第6項の適用を受け、財産評価通達によらず、時価で評価される可能性があるからである。しかし、最近のように、マンション価格が高騰している現状では、高層マンションに限らず中古マンションや通常の新築マンションでもよく似た現象は起こっている。これらすべてについて、相続や贈与のときに、税務当局が第6項を適用することは税務行政上無理があるだろう。税務当局は、なんとなくや、突然ではなく、具体的、法的な条件整備をしてから、第6項の適用を実行すべきだと考える。

文責;増井 高一