過大な役員報酬(適正役員報酬)はどうして決まるの?

日本は資本主義国家である。社会主義国家ではない。これは麻生太郎大臣が国会でよく飛ばすジョークである。しかし、税法の世界を俯瞰すると、これはもうかなり社会主義国家に近い。雇われ社長ならいざ知らず、中小企業(いわゆる同族会社)のオーナーが自分のお金で会社を設立し、自己の才覚と営業努力で儲けている会社から、利益に見合う役員報酬を取る。儲かっていれば、その範囲でいくら給与をとってもいいはずだ。これは自由主義国家では当たり前のことであろう。

しかし、実際には、なかなかそうは問屋が下ろさない。国税庁は、会社の役員が会社から受け取る役員報酬について、過干渉とも言えるほど監視している。そして、常識を超えた役員報酬は過大役員報酬として否認し、役員賞与つまり利益処分との判定をくだす。

税法では役員給与はもとより利益処分という考え方が根底にあり、
① 定期同額給与
② 事前確定届出給与
③ 利益連動給与(法人税法34①)以外は法人の損金算入を認めていない。
また、期中での役員報酬の増額はもとより、減額についても、かなり厳格な条件が必要である(法令69①-ロ、①-ハ)(法人税基本通達9-2-12の3)。
であるから、一度決めた役員報酬は、期中では一切触らないのが賢明である。
日本は自由主義、資本主義国家とはいえ、もともと、一部の人が富や権力を独り占めするのは嫌う。太古から日本人は農耕民族で狩猟民族ではない。村、社会において、生産物はできるだけ平等に配分される。その意味で、日本は、もとからかなり社会主義に近い国家だと思う。それと、東南アジア人(湿気の多いモンスーン地帯では特に)は非常に嫉妬深い。もっとも税法では、課税の公平性を図るという大義名分になるのだろうが、ときに行き過ぎた嫉妬深い税法や通達も非常に多い(笑)。

さて、本論に話を戻そう。さすれば過大役員報酬かどうかは何によって判断されるのだろう?形式基準と実質基準がある(法令70条1号)が、とくに実質基準について見よう。

  1. 当該役員の職務の内容
  2. その法人の収益及び使用人に対する給与の支給
  3. その法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況(法人税基本通達9-2-21

顧客から質問やお願いがい多いのは、同族会社における奥様や子供さんの役員報酬である。子育てに専念している主婦や、成人していない子供に対して役員報酬を支払えるのかというテーマである。この場合は ①と②が判断材料となる。

役員として何の仕事をしているのか?いつ、その仕事に従事しているのか?同じような仕事なら使用人にいくら払っているのか?などである。大概、従事している仕事は経理、総務、資金繰り、労務ということになる。実際、従事しておればいいのだが、まったく会社に出てこないケースもある。これはまったく認められない。
経営に参画しているというのであれば、決め事ごとに取締役会を開き、議事録をしっかり残すことである。成人していない子供も同様で何をしてもらっているのかである。特に住所が遠く離れている場合には難しくなるだろう。

最後の③の条件が不可解である。同種規模、同種事業の類似するものの役員に対する給与の支給状況である。このサンプリングはどのようにして選ぶのだろうか?どの地域から選ぶのだろうか?同種規模の範囲はどこまでなのか?サンプリングの個数はいくついるのだろうか?なにも明らかにされていない。
国税不服審判所の公表裁決事例などを見ても、税務署側が挙げている類似法人は役員給与の額が示されるだけで、会社名も明らかにされない。ほんの何社かの平均値で簡単に過大役員報酬が決められている。裁決例では、ほとんど職務に従事していない非常勤役員に多額な報酬を支払っているケース多いので、ある程度、理解はできる。
しかし、ポーカーでいえば、手の内を見せずに、相手を降ろさせてしまった格好である。どうやら、最初から犯人(黒)と決めてかかって、サンプルは適当に選んでいるようにみえる。

判例の多くは非常勤役員に対して過大役員報酬だと認定されているケースが多いのだが、代表取締役などの常勤役員の報酬についても、過大と認定されている判例もあるか。そして、その場合、いくらが過大役員報酬の額になるのかについて、決まった法則はないようである。まあ、常識的?な金額にしなさいということだろう。しかし、考えてもみよう。一代で、のし上がって大きな事業や会社を起こし成功する人は、常識人ではない。スティーブ・ジョブス、ビルゲイツ、孫正義、稲盛和夫・・・はどうなるのだろう?これらの天才たちは常識の通用するような人たちでない。当然、その役員報酬も桁外れになるだろう。

中小企業でも、飛びぬけて優れた経営者はいっぱいいるはずだ。このような人たちまで、同じ尺度で過大役員報酬が認定されるのだろうか?

文責 増井 高一

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