1 タワマン相続税対策、最近の判例

タワーマンションを使った相続税対策は、過去にも度々否認されてきた。

これらのケースでは取引に法的な問題があるわけではなく、また相続税評価通達に従って評価されているのだが、評価通達6項に照らして認められない。評価通達6項の判断基準は以下の通りである。

  1. 評価通達による評価方法を形式的に適用することの合理性が欠如していること
  2. 他の合理的な評価方法が存在すること
  3. 評価通達による評価方法に従った価額と他の合理的な時価の評価方法の間に著しい乖離が存在すること
  4. 納税者の行為が存在し、その行為と著しい乖離が存在することの間に関連性があること。
<事例1>
  1. 平成19年7月被相続人であったお父さんが入院したがお父さんはすでに認知症になっていた。
  2. 平成19年8月お父さん名義でマンションを2億9300万円にて購入
  3. 平成19年9月お父さん亡くなる
  4. 平成20年相続税の申告、評価額5800万円(購入価格の約20%、乖離率約4.9倍)
  5. 平成20年7月にマンションを2億8500万円にて譲渡
<事例2>
  1. 平成21年12月、被相続人であったお父さんは、銀行から借り入れ、甲不動産を8億3千万円で取得
  2. 平成21年12月、さらに、銀行からの借り入れ、乙不動産を5億5千万円、銀行からの借り入れは甲と乙で約10億円となる。
  3. 平成24年6月、被相続人が死亡
  4. 相続人が不動産と借入金を引き継いだが、相続税はゼロになった
  5. 平成25年6月、相続人は乙不動産を5億1千万円にて譲渡
  6. 平成28年4月、税務署から相続税の更正処分を受ける
  7. 銀行が作成していた貸出稟議書には、「相続税対策のためローンを実行し不動産を購入」といった旨の記載があった

タワーマンションの相続対策

2 <事例1>のポイント

  1. 被相続人の健康状態;入院状態で認知症だったので、通常の意思能力はすでにないと考えられる。被相続人はまた不動産購入のために、物件視察や契約を交わすことはできなかったと推定される。
  2. 不動産の購入が死亡直前に行われ、その譲渡も相続開始の直後に行われている。
  3. 不動産の取得価額と評価額が著しく乖離している(乖離率4.9倍)

これらを総合的に勘案すれば、評価通達6項により、他の合理的な方法によらなければならない。

3 <事例3>のポイント

  1. 被相続人の健康状態;年齢が91歳と高齢なので、積極的に10億円も借入れ、不動産を購入する意思があったかどうかが疑問
  2. 不動産の購入と譲渡が被相続人の死亡直前、直後に行なわれている。とくに、乙不動産の譲渡は死亡後1年くらいで行われている。
  3. 不動産の取得価額と評価額の乖離が大きく、その結果相続税がかからなかった。
  4. 銀行の貸出稟議書に「相続対策のための不動産購入」と記載されていた

これらを総合的に勘案すれば、評価通達6項により、他の合理的な方法によらなければならない。特に、この案件では銀行の稟議書の中味を確認されていることである。

銀行は、税務当局に協力的なので、「秘密を守ってくれるだろう」などという甘い認識は捨てなければならない。