1 意外と簡単な決算期の変更

法人の決算期の変更は、意外と簡単にできます。しかも、変更できる期限は決算期ではなく、申告期限なので、期の途中で簡単に変更でき、費用もほとんどかかりません。
決算期の変更が、財務戦略上(または節税戦略上)有利な場合は以下のような時です。

  1. 売上や利益が一時期に集中する場合
    たとえば決算期が06年3月末であるが、06年2月に売上と利益が集中してしまうような場合、決算期を06年1月にすれば、10カ月間で一旦決算を締めた後、あらたに12か月間の猶予が与えられるため、余裕をもって節税が図れる。
  2. 役員報酬をどうしても変更したい場合
    中小企業では売上が、常に安定しているとは限らず、売上が急増したり、激減するケースもある。急増する場合には役員報酬を上げたいし、激減する場合には、役員報酬をさげたい。現行の法人税法では、期の途中で役員報酬を増やしても、減らしても、その差額につき、役員賞与(利益処分の一種)として認定してしまうため、期の途中で、役員報酬の変更はできない。しかし、決算期を変更すれば、期初が変わるので、新たに役員報酬を設定できる。
  3. 消費税の早期の還付狙い
    設備投資が多額で、消費税の還付が見込まれる場合、決算期の変更とともに、課税事業者の選択届を提出すれば、消費税の還付を早く受けることができる。

2 決算期の変更手続き

  1. 決算期の変更を決議した「臨時株主総会議事録」の作成
  2. 定款の事業年度の条項を、「変更した決算月」に変更
  3. 税務署と県税事務所と市役所に決算期を変更した旨の「異動届」の提出

なお、決算期は登記事項ではないため、法務局への届出はいりません。

3 事業年度が1年未満の税務会計処理の注意点

  1. 交際費の枠
    資本金が1億円未満の法人では、交際費につき年額800万円の控除額があるが、月数割りとなる。
  2. 減価償却費
    年間の償却額の月数按分となる。
  3. 消費税の判定基準
    消費税の各種判定基準は1年が基準だが、月割りで按分した金額となる。

4 租税回避に注意すること

  • 法人が決算期を変更することは通常軽々しく行われるべきものではない。明らかに、税金負担を回避しようという意図が見え見えの場合は、「同族会社の行為否認」が出動し、租税回避行為として否認される場合があるので、注意が必要である。やはり、決算期変更の合理的理由が明確な方がよいことは、言うまでもない。