藤井聡太四段快進撃の秘密;実戦派ツメキスト

#藤井聡太 四段(14)

わたしの事務所のすぐそばにある関西将棋会館の周りでは、最近、朝からたくさんのテレビ局の取材陣が集まり、ごった返している。

そう、最年少棋士(14歳)、藤井聡太四段が、連勝記録をどこまで伸ばすか、今や、日本中の人々が注目している。6月7日は3局も対局があったため、一気に連勝記録を23まで伸ばした。これは、羽生善治名人の22連勝を破る歴代3位の記録で、次は、神谷広志七段の28連勝(一位)を超えることができるかどうかに、世間の関心は集まっている。

藤井聡太四段の天才ぶりは凄すぎて、わたしのようなアマチュアには、彼の将棋の本質は、なかなか掴めないかもしれない。しかし、わたしなりにその強さの秘密に迫ってみたい。

まず、かれの経歴で特筆すべきは、その詰将棋の際立った才能であろう。かれは小学生のころから詰将棋をただ解くだけでなく、創作にも優れた才能を発揮してきた。とくに、詰将棋を解くスピードを競う選手権でかれは2年連続優勝している。これが、どんなに難しいことか詰将棋を少し解いてみたことのある人なら分かるだろう。この選手権で出される問題は30手を超える長手数のもので、そんな難解な問題を、すらすらと、ものの数十秒で解いてしまうから舌を巻く。

詰将棋を創ることと、解くことに人生のかなりの時間を費やし、かつその能力が極めて高い人を「ツメキスト」と呼んでいる。詰将棋は「パズルの王様」と言えるくらい奥行きが広く深い。
とくに、創作は難しい。

  1. 詰めあがったとき手駒が余らないこと
  2. 余詰めがないこと
  3. 詰め方は最短手数で手順を尽くすこと
  4. 受け方は最長手数で受けること
  5. 盤上に無駄駒(意味のない駒)がないこと

などである。このような条件下で、捨て駒を中心とした意外性(パズル性)に挑戦していくのがツメキストである。

詰将棋は指し将棋上達の基本ではあるが、優れたツメキスト=優れた実戦棋士ではない。なぜなら、詰将棋は意外性を追求するパズルだから、そのような奇想天外な手筋はなかなか実戦では現れにくい。そのうえ、ツメキストは芸術家でもあるから、手筋の美しさや、形の美しさといった美学を追求する傾向がある。
プロ棋士でツメキストの代表は、故塚田正夫九段、故二上達也九段内藤国夫九段谷川浩司九段(17世名人)、北浜健介八段斎藤慎太郎七段などである。木村義雄名人大山康晴名人中原誠名人羽生善治名人渡辺明竜王はツメキストではない。唯一、歴代永世名人でツメキストは谷川浩司九段だけである。谷川浩司九段の寄せは「光速流」と呼ばれるが、優れたツメキストであることが影響しているだろう。しかし、谷川九段はやはり美学を追求する棋士である。つまり、泥臭くさい手や、ひたすら粘る手や、長手数の入玉将棋を好まない傾向がある。

話を、藤井聡太四段に戻そう。かれはツメキストでありながら、徹底的した実戦派である。わたしも彼の23連勝の将棋を何局か調べてみた。とくに印象に残ったのは澤田真吾六段(25歳)との20連勝目の対局である。藤井四段は、若手強豪相手に千日手(引き分け)後の指し直し局で、大苦戦の展開となり、コンピュータの評価関数は、終盤で、-1,200点を超えるという不利さだった(-800点以上も差が開くとプロ同士ではなかなか勝てない)が、終盤、自陣に打つ角などの妖しい手を連発し、サーカスのような手順でついに逆転した。

そこには、ツメキストの美学はなかった。その指し回しは、どこまでも、勝ちに貪欲で、執念深く、ときに老獪な超実戦派棋士だった。

それなのに、局後のインタビューに応える、かれの態度の、淡々として、堂々たることよ。そして、「20連勝は僥倖でした。」と謙遜する。これが14歳の少年だとは?

久しぶりに、将棋界にとってもまた日本にとっても、明るいニュースである。

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