三浦九段スマホ事件の顛末(てんまつ)

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わたしの愛する将棋の世界で、そして私の愛すべきプロ棋士たちの間で、こんなに不可解な冤罪事件が発生し、しかも、事件発生から4か月以上も経過するのに、すっきりとした形で、事態が収束されないのは、本当に残念なことである。

三浦九段は、昨年11月に1年間の長いトーナメント戦を勝ち抜き、竜王戦の挑戦権(相手は渡辺明竜王)を獲得していた。それがどうしたことだろう?渡辺竜王が急に将棋連盟に「三浦九段はスマホ搭載の将棋ソフトを対局中にカンニングした恐れがある。」と申し出て、「三浦九段が挑戦者になるなら、対局は拒否する」とまで、言い出したものだから、連盟側も当惑し混乱した。その証拠というのは大きく二つあった。一つは、対局中に、不可解な長時間の離席が多かったこと。もう一つは、三浦九段の指し手が、ある局面において、技巧という将棋ソフトの指し手と、高い確率(92%くらい)で一致していたというのである。連盟側の役員もこの勢いに押されたのか、三浦九段をほぼ黒と断定し、なんと、挑戦者決定戦の3番勝負の相手である、丸山忠久九段を挑戦者にし、7番勝負をフルで戦わせたものだから、もう後には戻れない。

わたしは、この事件の一連の経過を見ながら、日本将棋連盟は、なんと稚拙で危険な対応をしたのだろうと思った。それはそうだ。大きな証拠の一つの離席率は、なんの証拠にもなるまい。離席率の多い棋士の第一人者は糸谷哲郎八段である。

糸谷八段は対局中に頻繁に離席し散歩に行く。かれの棋風は「糸谷不在流」と呼ばれるから、まず、一番疑われるのは糸谷八段ということになる(笑)。

さて、二つ目の大きな証拠の「将棋ソフトとの一致率」である。こちらの方がおそらく連盟側の決め手になったのかもしれないが、もし、誰かが、犯人の似顔絵や写真と似ているという理由だけで逮捕されたら、恐い話である。第一、三浦九段が技巧というソフトで研究していれば、指し手は似てくるかもしれないし、終盤であれば指し手が制限されるから、一致率が高くなるのは当然のことであろう。

チェスの世界を見てみよう。チェスの世界では、当時、世界チャンピオンであった、カスパロフが、IBMのコンピュータソフト「ディープブルー」に敗れたのが1997年であるから、もう20年前である。チェスの試合でも、この種のカンニング問題は当然起こっているが、とにかく、現行犯でないと罰することはできないそうである。まあ、スーパーの万引きと同じということである。

いよいよ、三浦九段の白(潔白)が証明される日が来た。昨年の12/26に、将棋連盟の設置した第三者委員会(ベテラン有名弁護士が中心で結成)なるものが、三浦九段の所持していたスマホや、対局当時の盗写カメラなどを分析した結果、「三浦九段が不正を行った証拠は全くない」と発表した。しかも、指摘の離席は不自然なものではなかったし、一致率も証拠にはならないということだった。ただし、調査委員会は、当時の切羽詰まった状況下(竜王戦が直近に迫っていた)で採った将棋連盟側の処分は妥当であったという。この最後の結論はどうも腑に落ちないが、とりあえず、三浦九段は白(無罪)であったということになる。であるならば、これはまさに冤罪である。

第三者委員会の公表を受け、今年に入って、連盟側の谷川浩司会長は、三浦九段に対する謝罪を正式に行い、自らも会長職を辞任した。同時に島朗常務理事も辞任した。しかし、連盟の「みそぎ」はこれだけでは済まなかった。2/27の臨時総会では、残る5人の理事の解任請求が提起され、3人が解任された。これを見ても、他の将棋棋士たちの不満や怒りはやるせないものがあったと推察される。

渡辺明竜王が三浦弘行九段を疑った理由は簡単である。「三浦九段ごときに俺が負けるはずはない」という思い上がり、思い込みである。渡辺竜王はこの事件の前まで、三浦九段に3連敗を喫していた。この事実がどうしても渡辺竜王には納得できず、許されなかったのかもしれない。しかし、それにしても傲慢である。所詮、勝負の世界ではないか?いつ、だれに、負けてもおかしくないのである。自分が負けた原因を将棋ソフトに押し付けた。この罪は重い。このとき、まだ竜王戦は一局も始まっていなかった。そうであるなら、電子機器の持ち込みを禁止すれば、ことは、終わっていた。その上で、堂々と挑戦を受けるべきだろう。なんという狭量さであろうか?ここには、日本の伝統ゲームを、自分たちプロ棋士が支えているという自覚もないし、同じ棋士仲間の将来や家族への配慮のかけらもない。

竜王は単に強ければいいというのではない。竜王として、また、将棋界の第一人者としての品格を備えなければならない。権威を補うものは品格である。残念ながら、渡辺竜王はこの品格を持ち合わせていなかった。渡辺竜王は強いから、ある種の権力を手に入れてしまった。そしていったん権力を握ったら、気に入らない棋士は排除する。権力を握った者の強引な主張に、将棋連盟の理事たちはいとも簡単に迎合してしまった。

連盟は、最初から、第三者委員会を建てるか、弁護士に相談すればよかったのである。こんなにもろい証拠で、黒といえる弁護士など世の中に存在しないだろう。それに、チェスの世界のルールなども参考にできたはずだ。

さて、連盟の会長や理事が5人辞めたところで、話は終わりではない。三浦九段の名誉と竜王戦の賞金、また対局できなかった4か月間の対局料は誰が保証するのだろう?三浦九段の師匠である西村一義九段は、竜王戦の賞金や精神的慰謝料を含め1億円は損害賠償に当たると怒りをあらわにしている。もっともである。

連盟幹事等の「みそぎ」は一応終わったが、渡辺竜王にはそれがない。確かに言葉では謝罪したが、それに伴う実がない。誠意ある行動がないのだ。

わたしは、渡辺明竜王は直ちに竜王位を返上して、少なくとも賞金の半分を三浦九段に支払い、一から、トーナメント戦を戦うべきだと思っている。

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三浦九段スマホ事件の顛末(てんまつ)” に対して1件のコメントがあります。

  1. 善人 より:

    将棋連盟を続ける為には、
    1.自分が贖罪するべきと思う棋士は、自分で判断し、一定期間休場する。
      一年、一ヶ月、数年。休場期間はご自分で決める。
    2.また、同時に将棋連盟へ寄付金を出す。ご自分で決めた額を。
    3.将棋連盟は、寄付金の全額を三浦九段に渡す。また、金額が一億円以下なら、満たない額を将棋連盟は
      補填する。
    4.竜王戦、名人戦は名称を変更する。
    まず以上。

  2. より:

    過去と復帰後の技巧との一致率は、興味あります。以前と同じようなら、本当に無実なんだと、スッキリします。
    何度も対戦している、久保さんや渡辺さんが感じる違和感がまったくの勘違いともおもえなかったので。

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