海外で営業や生産を行うために設立した子会社に対して、技術指導や営業指導のために本社から人材を投入することはよくある話である。
設立当初、子会社は、本社に「おんぶに抱っこ状態」で、また、本社も子会社をまるで幼子を守り育てるように、いろいろな経費を本社で負担することが多い。
しかし、こういった本社が使う経費は、税務署からすれば、否認対象となり、格好の餌食となる。人間社会では親が子供を助け甘やかせることは当たり前の話であるが、税務では全く通用しない。法人は生まれた時から経済人と定義されるから、生まれた時から子にあらず、大人扱いである。
否認の対象となるのは、本社の人材が現地で直接使った経費だけではない。本人が本社から支給されている給料にまで派生する。つまり、派遣人員が滞在する日数によって日割り計算を行い、子会社分は子会社の費用として、本社の費用に当たらないとして寄付金として否認される。
担当官によってはかなり強引なやり方で、否認してくるので、面食らうことも多い。たとえば、本社の共通経費である本社の家賃にまで言及してきたので、さすがに、これには同意できず、怒りを覚えたことがある。
税務対策としては、出張報告書の記載を厳密に行うことである。まず、実際は子会社にいても本社のためにする仕事も多いはずであるから、作業内容を明確にすること。現地で休んでいる日は子会社の滞在日数には入れないこと(入れるのであれば、分母も365日とすべきである)。営業の中味が、本社と子会社の両方に関わり、利益配分が折半であるようなビジネスではその時間配分も半々にすべきであろう。このほか、航空券代やホテル代も仕事内容により、細かく配分する必要がある。
いずれにしても、子会社とよく話し合い、一定の費用は業務委託費として本社に支払う方法を取るか、滞在が長期に及ぶのであれば、子会社から給料を支給する方法に切り替えるべきである。