非上場株式についても、相続税法上の評価がなされ、それにもとづいて、相続発生時には相続税が課され、また、譲渡が行われれば、所得税、法人税の問題が生じてくる。
非上場株式では、その所有がほとんど社長以下一族で占められているので、同族会社と呼ばれ、通常は、原則的評価方式で評価される。これは、会社の純資産と類似業種批准価額(上場株式を参考に業種ごとに定められた評価額)で構成されている。これ以外に特例的評価方式(配当還元方式)が認められる場合もある。
細かい計算の中身はひとまず置いておいて、原則的評価方法は、かなり高額になることが多い。特に、会社が利益体質を長年堅持しており、かつ、土地や有価証券などの資産の含み益が多くある場合は極めて高くなる。しかも、清算価値ではなく、その時の時価で評価される。つまり、清算であれば含み益に課されるだろう法人税はこの場合は控除できないとしている。これに対して、特例評価方式(配当還元方式)は簡易で安価な評価方式である。
まず、株主上位3グループで株式の50%超を占めれば、同族会社になる。グループというのは親族、血族その他それに類する株主は全員含まれる。もし、筆頭株主グループが50%超保有していれば、会社の支配権を彼らが握ることになるので、その他の株主グループは同族株主からはずれ、配当還元方式で評価される。
筆頭株主グループが50%未満の時は、次に30%基準があり、30%以上保有していれば、同族株主となり、原則的評価方式になり、30%未満の株主グループは配当還元方式となる。
さらに、筆頭株主の30%未満の株主ばかりだとすると、15%基準が採用され、15%以上の株主は原則的評価方式になり、15%未満の株主グループは配当還元方式となる。ただし、会社の役員はほとんど原則的評価となる。
以上が、同族会社の株式評価の概略であるが、頭の回転の早い人は、株式を分散して、15%未満の株主ばかりに分散すれば、いいのではと、考えるだろう。
しかし、税法はそれほど甘くない。実質的支配基準というのがあり、株式の持分だけではなく、誰が会社を実質的に支配しているかで決める。それはそうだろう。株式をいかに分散しても、真のオーナーがいるはずで、経営権を誰かが握っていないと会社経営は成り立たないわけだから。
さらに、もう一つ関門がある。課税上、著しく弊害がないかどうかを吟味される。たとえば、相続税をまぬかれるために、短期的に一気に株式を移転しても(過去にはいろいろな複雑なスキームが実験されたが)、結局、課税公平の見地から著しくかい離して、税額が不当に安くなっていたり、またゼロになっていたとすると課税上弊害があるということで、アウトということになる。いくら、形式条件を充足しても、実質で判断しますよ、あるいは税金そのものが、極端に安くなるような方法は、すべての法的条件をそろえていてもだめですよということなのである。この辺はすでに「脱税と節税の間1,2,3」で述べた。

では一体どうすればいいのか?一言でいえば、こつこつ時間を掛けて株式移転をすることまた、会社の純資産評価が高くならないよう、節税対策を行わなければならない。具体的対策は時間を掛けて細かく、かつ、幅広い戦略、戦術を使わなければならないということになる。