バブル盛んなりし頃、地価の高騰により土地をたくさん所有している会社では、その会社の株式の評価が恐ろしく上昇した。そのため、相続が起こった時に、その財産評価額が著しく高くなり、相続税が払えない相続人がたくさん出現した。最近もあの頃ほどではないにしろ、ミニバブルが生じており、さらに相続税の対象範囲が広げられたため、よく似た状況が起きている。
さて、過酷な相続税とはどういう意味だろう?それは上場株ならいざ知らず、同族会社の株式など、ほとんど市場流通性がないのに、これを一方的に評価して、税金を掛けてくるということが過酷だということである。もし、相続財産が会社の株式の他にたいしてなければ、相続人に相続税を支払う原資はなく、場合によっては自己破産ということもありうる。もちろん、救済策として、延納または納税猶予の制度はあるが、換金できない資産に課税することに変わりはない。

日本国民は、このことを当たり前に許容しているが、冷静に考えれば、これは明らかに財産権の侵害であり、憲法違反ではないだろうか?
いずれにしても、実現した所得にではなく、財産の評価に対して課してくる税金なのである。(固定資産税もこれにあたるが。)しかも、その評価方法はきめ細かく決められており、まるでそれが正しい株式時価であるかのように大手を振って歩いている。
こうなると、同族会社の経営そのものにダメージを与えることも往々にして起こり、場合によっては、一族が滅んでしまう。
一番手っ取り早い解決策はM&Aつまり会社を売ることであるが、土地だけの会社ならいざ知らず、一般的には会社の事業継続が前提となるので、そんなに簡単に実行できることではない。

そこで、いろいろな事業承継対策が考え出されたのだが、基本的な対策としては株式評価を下げるか、株式移転を行うかである。ただし、短期的で極端な方法では、租税回避ということで、否認されてしまうので、時間をかけて丁寧に実行する必要がある。具体的な方法論については詳細をここでは述べられない。
言いたかったことは、国家権力により財産権の侵害という禁を破ってでも課してくる過酷な相続税に対して、断固として対策を建てて、実行しなければならないということである。しかも、その方法については、税務署から否認を受けない安全な方法でなければならないということである。これがまたきわめて難問である。